研究概要 |
乳腺微小病変、前癌病変におけるホルモンレセプターとその関連物質の蛋白発現の検討。 材料は乳腺手術材料のホルマリン固定パラフィン包埋切片を利用した。奨励は群馬大学附属病院及びKoerner F博士との共同により、MGH症例についても検索した。病変はACL(Atypical Cystic Lobule)を主体とし、これと癌特に低悪性度の非浸潤性乳管癌(microrpapillary type)及びBlunt duct adenosisなどの良性病変を比較検索した。ACLは我々が前癌病変として提唱する核異型を有する嚢状病変である。以下の結果を得た。 1-1 Estrogen Receptor(ER)及びProgestrone Receptor(PgR)に加えて、cyclin D1 FAS(fatty acid synthetase)の蛋白発現の検討 ABC法による免疫染色により検索した。使用した抗体はER、PgR、Ki-67、FAS(fatty acid synthase)、cyclinD1、actin、gesolinである。ER/Ki-67、PgR/FASについては2重染色をして、細胞内局在を検討した。ACL細胞は1)ERの高い発現を見る。2)PgRとFASの瀰慢性陽性所見を有する。3)cyclinD1は散在性に陽性である。4)gelsolinは減少ないし消失している。4)Ki-67陽性細胞は癌と比較して低い。以上よりACLの形質は増殖能が低いことを除けば、低悪性度非浸潤癌との知見を得た。 1-2 Osteopontin(OP)mRNA発現の検討 乳腺組織の微小石灰化に関与する物質としてOP発現を免疫染色及びin situ hybridization(ISH)で検索した。OP蛋白は低悪性度(cribriform type)の非浸潤癌で80%、高悪性度(comedo type)の非浸潤癌で50%、ACLで56%の発現があり、主に組織球及び腫瘍周囲の間質に発現をみた。またISHで組織球内にOP mRNAを確認した。OP発現形式から見るとACLの石灰化は低悪性度非浸潤癌と同様である。 2 Co-activator発現の検討 Steroid receptor co-activator(SRC)としてSRC-1, SRC-3(AIB1)の発現を検討した。免疫染色による検討ではSRC-1は良性、ACL、癌の核いずれにも幅広く存在した。SRC-3(AIB1)は比較的限局した悪性の高い浸潤癌に陽性所見が見られた。ERの発現と比較した局在の検討や免疫染色やin situ hybridiationによる検索は継続する予定である。
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