1.抗ヒト・シナプス小胞アセチルコリントテンスポーター(VAChT)抗体の開発 前年度に得た組み換えヒトVAChT蛋白をラットに免疫し、血清を精製してヒトVAChT抗体(パラフィン包埋標本に対しても免疫組織化学が可能な抗体)を作成した。 2.免疫組織化学とIn situ hybridization法によるヒト中枢神経系におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)とVAChTの発現の多様性の検討 VAChTの分布はChATの分布と類似していることがわかったが完全には一致せず、また投射型コリン作動性神経細胞は局所回路型コリン作動性神経細胞に比べ、ChAT、VAChTともに強く発現されていることがわかった。さらに、投射型コリン作動性神経細胞の中でも、特にMeynert基底核Q神経細胞は常時ChATとVAChTを合成しており、その機能を維持していることが推測された。すなわち、同じようにみえるコリン作動性神経細胞の中で、機能蛋白発現に強弱があることが判明した。 3.Reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)・サザンブロット法によるChAT mRNAの多様性の検討 ヒト剖検脳凍結標本よりmRNAを抽出し、5'非翻訳領域の異なる3種類のChAT-mRNA(M型、N型、R型)がどの領域で認められるかRT-PCR・サザンブロット法を用いて検討した。尾状核ではR型のChAT mRNAが2種類存在し、N型やM型は検出されなかった。一方、これまでの我々の研究では、脊髄前角にM型のChAT mRNAが検出されたが、N型やR型は検出されていない。従って、尾状核と脊髄前角とではChAT遺伝子の転写機構が異なることが明らかになった。
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