前年度に引き続き症例を追加して、各種腫瘍の間質マトリックスとともに細胞骨格の超微形態像も加えて急速凍結ディープエッチング(QF-DE)法および免疫組織化学的に検索した。材料は生検材料を用い胃の神経鞘腫、皮膚の神経線維腫、皮下組織のデスモイド腫瘍および線維組織球腫、大腸腺腫および腺癌、カルチノイド腫瘍、軟部組織弾性線維腫などを検索した。QF-DE標本は5ミリ大の組織を用い、切り出し面よりPBで可溶性蛋白を洗い流し、グルタールで固定後、液体窒素で冷却した銅板を用い急速凍結を行った。凍結面をメスで割断しディープエッチングおよび炭素・白金による蒸着を行い、組織をハイターで融解しレプリカ膜をグリッドで回収して透過電顕で観察した。同様に通常電顕標本と、さらに光顕標本はHE染色標本に加えてビメンチン、アクチンおよびコラーゲン抗体を用いた免疫染色標本を作製してレプリカ標本と比較検討した。QF-DE法を用いた観察では、通常電顕で観察の難しい細胞骨格やコラーゲン線維などの詳細な超微構造が立体的に観察され、各々の腫瘍で細胞骨格の分布やコラーゲン線維の形態像に特徴がみられた。とりわけ、ミクロフィラメントは神経鞘腫と神経線維腫は他の2例に比べ少なく、デスモイド腫瘍では膜直下に巣状に分布し、線維組織球腫では膜直下に巣状に分布するものや細胞質全域に分布するものなど多彩な所見を認めた。一方、腫瘍細胞周囲におけるコラーゲン線維はデスモイド腫瘍では粗に分布し、線維間の介在線維はまばらで表面も平滑であった。一方、良性線維組織球腫と神経線維腫のコラーゲン線維は密に配列し、豊富な介在線維を有していた。今後、QF-DE法を用いて多くの症例を検索することにより、病態解析や病理診断への応用に役立つと考えられた。
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