今回、胃壁に転移したいわゆる食道癌肉腫(so-call ECS)症例について急速凍結デイープエッチング法による詳細に観察した。症例は72歳男性。主訴は嚥下困難。入院時中下部食道に5.5cm長の半周性のポリープ状腫瘤と胃に12x11cm大の粘膜下腫瘍が存在した。食道生検から扁平上皮癌(SCC)の診断が得られたが、全身状態状態不良のため胃全摘のみ行った。組織所見:胃腫瘍はシート状配列を示す上皮細胞からなる癌腫と紡錘形細胞からなる肉腫様領域からなり両者の移行像がみられた。免疫染色:癌腫部分はケラチン陽性を示したが肉腫領域ではビメンチンのみ陽性であった。電顕:腫瘍細胞にはデスモイド様構造を散見した。レプリカでは通常電顕に比べ細胞骨格が明瞭に観察され、広範囲に多量の中間径線維(IF)を有する腫瘍細胞がみられた。これらは粗面小胞体などの小器官は核周囲のIFを欠く狭い領域に分布していた。対照SCCも同様の所見を示しており、これは正常重層扁平上皮にも共通する像で角化細胞の特徴と考えられた。肉腫様領域には粗面小胞体の発達した線維芽細胞様腫瘍細胞が存在し、前記の腫瘍細胞との間に種々の程度の移行細胞がレプリカで観察された。 まとめ:今回の腫瘍はso-call ECSが胃へ転移したと考えられた。so-call ECSはSCCの一部が肉腫様化生を示す腫瘍で、従来は肉腫様細胞にケラチン陽性像やトノフィブリル、デスモイドなどを確認することで診断が行われた。今回QF-DE法を用い角化細胞の特徴をIFの量や分布、小器官との関連から判定し胃腫瘍は角化細胞および線維芽細胞様の腫瘍細胞とそれらの移行細胞からなることが示された。
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