研究概要 |
非ホジキンリンパ腫でホジキン様病巣を伴う4例につき、ホジキン様B細胞の免疫グロブリン重鎖可変領域を調べた。4例の内訳は1例がホジキン様病巣と瀰漫性大細胞型リンパ腫の合併、1例はangioimmunoblastic T-cell lymphoma(AILD-T),2例はATLであった。全例ホジキン様B細胞は非ホジキンリンパ腫と同じリンパ節に病巣があった。このうち瀰漫性大細胞型リンパ腫の症例ではホジキン様細胞は瀰漫性大細胞型リンパ腫とは隣接するも、混在する場所は少なかった。その他の3例では非ホジキンリンパ腫の腫瘍病巣中にホジキン様細胞が散見された。ホジキン様B細胞はCD20,CD30が陽性であったが、CD15は陰性であった。EBウイルスは1例の瀰漫性大細胞型リンパ腫と2例のATLで陽性であったが、1例のAILD-Tでは陰性であった。4例とも非ホジキンリンパ腫細胞はEBウイルス陰性であった。全例につきホジキン様B細胞はsingle cell manipulationで取り出され、免疫グロブリンH鎖遺伝子のPCR増幅がなされた。その結果ホジキン様B細胞は全例多クローン性であった。このうち瀰漫性大細胞型リンパ腫の1例とATLの1例でVH遺伝子の塩基配列を調べた。このうち瀰漫性大細胞型リンパ腫では分析した5つのホジキン様B細胞はin-frame sequenceを示し、これらのsomatic mutationの頻度は0から2.8%であった。ATLの1例では分析した5個のホジキン様B細胞はそれぞれ3.5%と17.7%のsomatic mutationを呈するin-frame sequenceを示したが、のこり3個はout-of frame sequenceであった。 これらの結果から種々のタイプのリンパ腫に出現するホジキン様B細胞は多クローン性であり、EBVに関連したものであると言える。これらの細胞は非腫瘍性であり、非ホジキンリンパ腫を背景として生じたものと考えられる。EBVは免疫グロブリン遺伝子のcrippling mutationに重要な関わりを有している事が示唆された。
|