研究概要 |
(1)冠動脈アテレクトミー標本の検討 狭心症患者のアテレクトミー標本を用いて、その病理組織所見と組織因子(以下TF)とそのインヒビター(以下TFPI)の局在を免疫組織化学で検討した。両者はいづれも動脈硬化巣の平滑筋細胞とマクロファージに認められるが、TFPI陽性の平滑筋細胞は増殖期のものが少ない傾向が見られた。また動脈硬化巣での新生血管内皮細胞にTFPIの強い発現を認めた。 TFPI発現の程度が血管壁にどのように作用するかを、血管平滑筋にTFPI遺伝子を導入し検討した。TFPI遺伝子を導入した培養平滑筋細胞はTFによる細胞遊走は消失し(Thromb Res 94:401-406,1999)、TFPI遺伝子を導入した家兎の頸動脈では、内膜傷害によっても大きな血栓は形成されなかった(Circ Res 84:1446-1452,1999)。またTFPI遺伝子導入とrTFPI投与の併用により、血管病変の進行は著明に抑制された(Circulation 103:570-575,2001)。 これら結果は、アテレクトミー標本でのTFPIの測定は、血栓形成のみならず内膜肥厚による再狭窄発生の指標になる可能性を示唆しており、臨床応用が期待できる。 (2)がんの転移とTF/TFPIの検討 大腸がん症例35例の原発巣と肝転移巣でのTF/TFPI蛋白の発現を免疫組織化学で検討した。原発巣ではTFPIの染色態度とがん組織の分化度とに相関は認められなかったが、肝転移巣ではTFPI陽性のがん細胞は少なく、TFは多くのがん細胞で陽性を示した。 肺がん手術症例43例についてその組織分類・分化度とTF/TFPIの発現を検討した。腺がん組織はTF,TFPIともに陽性を示したが、分化度との関連は認められなかった。
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