研究概要 |
血管周皮細胞のマーカーとして最も重要なのは平滑筋アクチン(SMA)である.種々の正常細胞および腫瘍細胞におけるSMAの発現は,その病態生理と深く関与する.ヒト胎児由来骨芽細胞SV-HFOの骨化誘導能は基底膜物質のラミニンで抑制されるので、SV-HFOにおける骨化誘導を抑制したいくつかの因子が、同時に血管周皮細胞への分化を促進する因子と考え,retinoic acid、DMSO、TGFβ1,collagen、laminin、fibronectin、Matrigel、等,種々の増殖因子および培養基質を用いて平滑筋アクチンやカルポニンの発現を検討中である.さらに次年度は,SAOS-2,OHS-4などのすでに樹立されているヒト由来骨肉腫細胞株を用いて比較検討を加える.また,われわれは,SMAの発現が,消化管間葉系腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor,GIST)の悪性度と正の相関を示すことを明らかにした。GISTをパタン認識の視点からクラスター分析することによって得られた腫瘍群は,臨床病理学的事項とよく一致し,かつ,SMAは統計学的な有意差を持って予後予測因子として有用であることがわかった.さらに,SMA陽性腫瘍は高率にc-kit遺伝子の欠損や点突然変異を伴っていた.c-kit遺伝子の異常もまたGISTの予後と相関することが知られているので,SMA発現を介した腫瘍プログレッション可能性やSMAの調節機構にc-kitが関与する可能性を検討中である.
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