研究課題/領域番号 |
11670183
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
人体病理学
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
小形 岳三郎 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (60009115)
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研究分担者 |
北村 均 横浜市立大学, 医学部, 教授 (20094302)
矢澤 卓也 横浜市立大学, 医学部, 講師 (50251054)
堀口 尚 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助手 (30238795)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 神経内分泌癌 / MHC classII / CIITA / promoter / L-Myc / N-Myc / HASH-1 / Tumor Immunity |
研究概要 |
宿主の癌細胞に対する免疫反応の強さは腫瘍細胞の性質に大きく左右されており、神経内分泌癌は腫瘍組織内リンパ球浸潤、癌細胞へのclassII MHC発現が認められず、classI MHCの発現も極度に低下しており、その原因がMHC抗原発現に関与する重要な転写因子であるclassII transactivator(CIITA)の発現不全にあることを我々は突き止めた。神経内分泌癌ではL-myc,N-mycといったbasic helix-loop-helix型構造を持った癌遺伝子の増幅、過剰発現が頻繁に認められることが知られているが、我々はL-myc、N-mycと同様にbasic helix-loop-helix型構造を持ち神経/神経内分泌への分化を制御している転写因子human achaete-scute complex homologue(HASH)-1が神経内分泌癌で過剰発現していることを報告した。これらの事実から、我々は神経内分泌癌に特徴的に過剰発現しているbasic helix-loop-helix型転写因子がCIITA転写活性に何らかの影響を及ぼしているのではないかという発想に至り、更に研究を進めた。結果的にHASH-1、L-myc、N-mycがCIITA promoter内のE-boxに結合しその発現を抑制すること、更にL-myc、N-mycがHASH-1の発現をup-regulateしていること、本来CIITAを誘導する働きを持つIFN-γがHASH-1の発現をもup-regulateしてしまうため神経内分泌系癌細胞においてはCIITA誘導因子としての機能を果たせないことが明らかとなった。このように、神経内分泌系癌細胞においては様々な原因によりCIITAの発現が抑制されており、これがMHCの発現不全、宿主の腫瘍免疫不全を惹起していることが示されたが、一方ではCIITA発現ベクターを導入して強制的にCIITAを発現させれば、容易にMHCの発現を回復できることも本研究により明らかとなった。この知見は神経内分泌系悪性腫瘍に対する強力で効果的な腫瘍免疫療法の確立が不可能ではないことを示唆しており、癌細胞にMHCを発現させるという意味において腫瘍免疫療法の基盤となるCIITA遺伝子導入に加え、腫瘍ワクチン療法など新たな腫瘍免疫療法を複合させることなどにより、新たな治療法へと発展しうると思われるため、今後はその確立へと研究を推進していく所存である。
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