研究概要 |
急性心筋梗塞や狭心症の原因病変である冠動脈硬化症に対する治療として、これまで経皮的冠動脈形成術(PTCA)が広く行われ、成果をあげてきたが、PTCAの最大の問題点は再狭窄である。近年、このようなPTCA後再狭窄を克服すべく、新しいインターベンション治療として、冠動脈ステント留置術が導入され、わが国でもこのステント施行例が急速に増加している。しかし、最近、冠動脈ステント施行例の増加に伴い、ステント術後の再狭窄が、従来のPTCA後再狭窄よりもさらに治療困難な再狭窄として臨床上の新たな問題となってきている。 我々はこれまで、ヒトステント術後の冠動脈壁を病理学的、および免疫組織化学的に解析し、ステント再狭窄部位では、新生血管の高度増殖、マクロファージの著明な集積、および平滑筋細胞の遊走・増殖で特徴づけられる著明な新生内膜増殖が認められることをはじめて明らかにしている(Circulation.1998;98:224-233.)。この研究成果は、ヒト冠動脈におけるステント後再狭窄メカニズムには、新生内膜の過剰増殖が関与することをはじめて明らかにしたものである。 本研究はヒト冠動脈の新生内膜増殖メカニズムを明らかにすべく、マクロファージ、平滑筋細胞、血小板などの細胞成分と血管作動性物質のup-regulationの関与を解析しようとするものである。我々は本研究において、ヒトステント後の新生内膜増殖過程では、マクロファージの集積に加えて、血小板GPIIb/IIIaレセプターが関与することを明らかにするとともに(Circularion 100:I-691,1999)。P-セレクチンの発現による血小板の活性化やP-セレクチン-好中球連関に基づく好中球の集積、さらには新生内膜の平滑筋細胞のエンドセリン発現などが関与することをはじめて明らかにしている。(Circularion102:II-733.2000)
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