研究概要 |
平成11年度始めには、悪性腫瘍におけるsurvivin発現の研究のために、survivinアミノ酸配列より2種類の合成ポリペプチドを作製し、それらを抗原として4羽の兎を用いてポリクローナル抗体を作製した。1羽の兎より得られた抗体は悪性リンパ腫症例を用いたWestern blotで85Kd,60kdと16kdに3つの濃いバンドが証明された。平成11年度の中頃にかけて、RT-PCR Southern blotを用い、それらのバンドの検定を行い、16kdのバンドはsurvivinであり、85Kdと60Kdのバンドはsurvivinとは異なる分子であろうと推定した。とりあえずこの分子をsurvivin関連抗原(SAA)と呼び研究を継続することとした。survivinは腫瘍細胞の細胞質に発現するとされ、われわれの免疫組織化学の結果もそれを支持した。これに反し、SAAは腫瘍細胞の核に一致して発現し、正常細胞には殆ど発現しなかった。この両者が悪性腫瘍においてどの様な生物活性を示すかを検討するために悪性リンパ腫、卵巣癌、胃癌症例を用いて免疫組織学的に検討した。結果は、悪性リンパでは両者とも統計学的有意差をもって予後不良因子であった。卵巣癌、胃癌ではSAAは70%以上と高率に発現があり、発現・非発現では予後不良因子としての有意差は出ず、survivinは40%程度であったが、それも発現・非発現で有意差は出なかった。即ち、SAAは癌腫ではその発現が予後不良因子であることよりも癌関連抗原としての意味があるのであろうと推定した。平成11年度の終わりには、この合成ポリペプチドを抗原としたマウスモノクローナル抗体を作製した。この抗体はSAAをより選択的に認識しており、この抗体と市販されたsurvivinの抗体を用いたimmunoprecipitationでは、SAAとsurvivinは結合しているものと推定された。現在、SAAのアミノ酸配列の検索などの研究を継続中である。
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