研究概要 |
科学研究費交付期間中に以下のことを遂行した。 1)survivinアミノ酸配列よりポリペプチドを合成し、それを抗原として兎ポリクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体を作製した。:作製した抗体はsurvivinを認識せず、蛍光抗体・免疫組織化学で増殖する細胞と癌細胞の核と細胞質に強く反応した。Western blotでは、22,60,85kdにバンドが見られた。 2)マウスモノクローナル抗体を2回サブクローニングした。:この抗体をY-49と呼ぶことにした。Western blotでは、同上の3本のバンドが見られたが、22kdのバンドがより濃く鮮明となった。細胞分画では、核には22kdタンパクのみが、細胞質には3つのタンパクが確認された。 3)flow cytometryで増殖細胞のY-49標識率を検討した。:PHA刺激正常ヒトリンパ球を用いてY-49標識率を検討したところ、Y-49はS,G2/Mに強く標識された。 4)免疫組織化学で各臓器と悪性腫瘍におけるY-49陽性所見を検討した。:リンパ節、食道、胃、大腸、睾丸、卵巣などの細胞増殖の盛んな細胞にY-49が陽性であり、肝臓、肺、腎臓、甲状腺などではY-49陽性細胞は少数であり、脳ではY-49陽性細胞は殆ど見られなかった。悪性腫瘍は殆どがY-49に陽性であり、悪性度の高いものほどY-49の陽性率が高かった。 5)非ホジキンリンパ腫症例でY-49陽性所見を検討した。:(1)節外性リンパ腫とdiffuse large B cellリンパ腫症例にY-49は高率に陽性となった。(2)Y-49高陽性群は低陽性群に比し、予後が有意差を持って不良であった。進行例(stage III/IV)に症例を限っても同様の結果であった。(3)多変量解析の結果、Y-49高陽性は独立した予後不良因子であった。
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