本研究は、免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)を用いることによって、ヒト癌の転移モデルを確立し、癌の浸潤・転移の分子機構の解明と治療法の開発を目的としている。このNOD/SCIDマウスの皮下ヘヒト骨を移植したところ、4ヶ月以上にわたりヒト血管・造血・骨が維持された(Hu-Bone SCIDマウス)。さらにこのヒト移植骨へヒト癌組織を移植すると、その腫瘍血管はヒト由来であった。そこでNOD/SCIDマウス皮下へ2ヶ所にヒト骨を、1ヶ所に同系マウス大腿骨を離して移植後、ヒト癌細胞を片方のヒト骨へ移植したところ、一方のヒト骨へ6週間以内に100%転移が見られた。一方、マウス移植骨への転移は12週観察したが、16%にとどまった。またHu-BoneSCIDマウスヘヒト白血病細胞株Rajiを静注したが、移植骨への浸潤はわずかであった。そこで移植前にヒト骨へ8Gy放射線照射し、Hu-BoneSCIDマウスを作成し、Raji細胞を移植したところ、早期より高度の白血病浸潤が観察されるとともに、照射後にも関らず血管はヒト由来であった。この系で白血病細胞移植群と非移植群においてヒト血管新生を観察したところ、移植群において有意に血管密度の増加が認められた。生体内でのヒト血管内皮細胞への遺伝子導入法の開発の基礎的検討として、Hu-BoneSCIDマウスにおけるヒト血管内皮細胞を標的にしたレトロウイルスベクター(EGFPおよびLac-Z)を作成し、5.9x10^7pfuの力価を有するウイルスを得た。
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