研究概要 |
初年度(平成11年)は、生理的条件下である静止期、妊娠、授乳、離乳各時期における神経内分泌的形質の有無を検索した。検索内容は、I)神経内分泌顆粒の有無を電子顕微鏡的検索により、II)神経内分泌顆粒内に含有される酸性蛋白であるchromogranin(Cg)A,B,C mRNA発現の有無をRT-PCR法にて検索した。神経内分泌顆粒はいずれの時期においても認められなかった。また、Cg mRNA発現については、CgAは妊娠14日、20日、授乳1日に発現が認められたが、CgBおよびCgCについては妊娠14日、20日において認められたが、分娩後には認められなかった。これらの結果は、(1)乳腺においても神経内分泌的形質発現が認められる、(2)これらの神経内分泌的形質発現は恒常的でなく、妊娠、授乳期におけるホルモン環境により変動する、(3)各Cg mRNA発現は別のホルモン支配を受け調整されている可能性がある、(4)Cg mRNA発現が認められても神経内分泌顆粒形成が明らかではないことから、a)Cg mRNA発現は認められるものの、Cg蛋白合成がない、b)Cg蛋白合成はあっても神経内分泌形質発現には至らない、などの可能性が考えられた。以上から、乳腺における神経内分泌的形質発現は存在しても、古典的な神経内分泌臓器に比較し、不完全な形である可能性が推察された。Cg mRNA発現におけるホルモン調節について、さらに検討するために、III)Estradiol(E2)投与ラットにおけるCg mRNA発現を検討した。5,50,500,1000ug/Kg/weekのE2を1〜4週間筋肉内投与した。いずれの用量および期間においてもCgm RNA発現をinduceすることはできなかった。平成12年度は、ラット乳腺腫瘍におけるCg mRNA発現を検索する予定である。
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