福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)脳病変の原因として基底膜の脆弱性に伴うglia limitansの断裂が考えられている。中枢神経系の基底膜、glia limitansの形成にはアストロサイトが関与しているが、我々のこれまでの検討では、FCMD症例でアストロサイトの未熟性を示唆する形態の変化等が観察されている。FCMDにおけるアストロサイトの特性をさらに検討するため、2例の胎児及び6例の小児、成人FCMD剖検例の大脳及び延髄のホルマリン固定、パラフィン包埋材料に関して酸化終末産物等に関する免疫組織化学的検索を行った。3例の胎児例を含む9例の非FCMD症例をコントロールとして用いた。胎児例ではFCMD症例と非FCMD症例の間に明らかな差異は認められなかったが、小児、成人例のアストロサイトにおいては酸化終末産物であるadvanced glycation endproductがcontrolに比べやや強く染色される傾向が認められた。その他の酸化終末産物である4-hydroxynonenal、8-hydroxy deoxyguanosineや非酸化経路による終末産物のpyrraline、methylglyoxalに関しては大きな差異は認められなかった。活性酸素の修復酵素であるMn superoxide dismutaseはFCMD症例でより強く染色される傾向が認められた。今回の結果からはFCMDのアストロサイトが酸化ストレスを受けやすくなっており、それに対して反応性にMn SODが増加している可能性が考えられ、FCMD脳病変の病因の主座がアストロサイトである可能性を支持する所見と思われる。Western blot hybridization等の定量的解析には十分量の凍結材料が得られず、今後の症例の蓄積をまって検討を進めていく予定である。
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