研究概要 |
血清総コレステロール値、LDL及びHDLコレステロール値の判明している145例の若年者(15-34歳)の大動脈組織を採取。免疫組織化学によりapoA-I、E、J及びBの大動脈壁内分布程度と年齢、血清コレステロール値及び内膜病変の程度との相関性を検討した。その結果、apoA-I,E及びJは、加齢及び内膜病変の進行とともに内膜・中膜内分布が増加したが、血清LDL・HDLコレステロール値との正の相関性を認めなかった。また、apoBは内膜のみの分布を示し、加齢及び内膜病変の進行とともに分布程度の増加を認めた。これらアポリポ蛋白の大動脈壁内浸入は、血清濃度よりも内膜病変の発生・進展に依存していると考えられ、特にapoJは若年者においても大動脈壁内での産生が窺われ、中高年齢層と同様に内膜病変との深い関わりが示唆された。 cholesteryl ester transfer protein(CETP)に関しては、免疫組織化学により若年者から高齢者までの大動脈壁内分布が判明した。正常大動脈では主として中膜に軽度の発現が認められ、内膜線維細胞性肥厚や動脈硬化性病変の発生によりCETP分布程度が増加した。CETPは、内膜・中膜の間質のみならず、細胞内にも分布しており、特に中膜平滑筋細胞内にも存在していた。そこでヒト肝・脾組織からCETP cDNAを抽出し、in situ hybridizationにて大動脈壁内におけるCETP産生を検討した。CETP mRNAは、中膜平滑筋細胞、動脈硬化巣内のマクロファージ及び平滑筋細胞に発現していた。動脈の構築細胞である平滑筋細胞は、積極的に脂質代謝に直接的に関与し、脂質蓄積防御に機能していると考えられた。
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