研究概要 |
小円形細胞肉腫は,形態学的に小円形細胞が主体をなす腫瘍で,鑑別診断学的に便宜上まとめられた腫瘍群を指す。骨や軟部に発生する小円形細胞肉腫は組織発生母地が多彩であり,病理診断に難渋することが多い。特にユーイング肉腫,末梢型神経外胚葉性腫瘍(PNET),悪性リンパ腫は化学療法や放射線照射の感受性が高く,一方,小細胞性骨肉腫は積極的な術前化学療法が要求される。患者の治療,予後の面から,正確で迅速な病理診断が望まれる。骨軟部腫瘍は病理診断が難しいと先入観を持たれていたが,近年,免疫組織化学の発達,特異的な染色体異常や変異遺伝子の存在が解明され,これらの鑑別診断は比較的容易になってきている。PNETを含むユーイング肉腫群13症例を凍結材料を用い,変異遺伝子の解析を行った。13例全例にEWS遺伝子とFli1遺伝子間の相互転座に伴う融合変異遺伝子の形成が見られた。切断部の解析ではEWS遺伝子のexon7,10,Fli1遺伝子のexon5,6,8,9と種々の部位で変異遺伝子を形成し,6型に分けられた。13例中7例でゲノムDNAの塩基配列を検討すると4例に切断点近傍両側に5'-AGAAAARDRR-3'の配列を認め,また,大部分の症例に切断点近傍にAlu配列やeukaryotic topoisomerase II cleavage siteの存在を認めた。これらの多彩で,多型を示す変化はユーイング肉腫群に特異的で,腫瘍の発癌機構に関与していると思われた。今後,他の小円形細胞肉腫の特異的な変異遺伝子を解析する事により,病理診断や予後判定,発癌機構の解明が期待される。
|