研究概要 |
[目的]進行性核上性麻痺(PSP)における異常タウの組織蓄積と神経グリアの組織傷害の関連を推察するために、免疫組織化学により神経グリアと神経組織傷害のマーカーを用いて、タウ蓄積との相関を検討した。[対象と方法]対象は大脳に老人斑が存在しないことを確認した臨床病理学的に典型的なPSP剖検脳7例(死亡時年齢73.7歳;男3例、女4例)である。ホルマリン固定後、標本は型のごとく作成し,次の部位を含む標本を選定した。上前頭回皮質、皮質下白質、島回、被殻、淡蒼球内節、内包後脚、視床下核、視床内側核、小脳皮質、皮質下白質、小脳歯状核。次いで一般染色に加え以下の一次抗体による免疫組織化学染色を行った。CD68,excitatory amino acid transporter 1(EAAT-1)、GFAP、MAP-2、myelin basic protein(MBP)、neurofilament protein、PHF-tau。なお、MAP-2は皮質樹状突起および胞体、NFPは白質軸索、EAAT-1、GFAPはastrocyte、CD68はmicroglia、MBPはoligodendrocyteのマーカーとして用いた。画像解析には対物20倍のレンズを使用、CCDカメラを介して対象領域の各10視野をコンピューターに取り込み,画像解析ソフト(MacScope)により免疫反応産物の密度を算出した。ついで対象領域ごとに得られた数値について推計学的検定を行った。[結果および考察]PHF-tau免疫産物密度とMAP-2、EAAT-1の免疫産物密度は、負の相関を、また、CD68、GFAP免疫産物密度は正の相関を示したが、相関係数は低かった。特に、淡蒼球内節、視床下核、小脳歯状核においてはPHF-tau免疫産物密度と組織傷害のマーカーの間にはほとんど相関がなかった。以上より、PSPの神経細胞傷害は異常タウの蓄積用量依存性ではない可能性が示唆され、神経細胞死の機構に異常タウ蓄積以外の要因を考慮する必要が考えられた。
|