本研究ではグリア細胞の神経細胞死への関与を明らかにするためにヒト神経変性疾患の患者剖検脳を対象に免疫組織化学的手法を用いて異常タンパク蓄積と組織障害との関連について検討を行った。対象は進行性核上性麻痺(PSP)、大脳基底核変性症(CBD)、嗜銀球を伴うピック病(PiD)、多系統萎縮症(MSA)である。結果:1)PSP7例において、PHF-tauとMAP-2、EAAT-1の免疫産物密度は負の、また、CD68、GFAPは正の相関を示した。PSPの神経細胞傷害はタウの蓄積用量依存性ではないと考えられた。2)PSP6例、CBD4例、加齢老人3例の海馬において、PSPと加齢老人では内嗅領と錐体細胞層に神経原線維変化とthreadsを、CBDでは白板と網状層にthreadsを認めた。さらに歯状回分子層にtau陽性grainを認めた。PSPの海馬タウ病変は加齢変化に類似していたが、CBDでは疾患特異的であると考えられた。3)PiD5例でcatalyzed reporter deposition法を用いてタウ病変を検討した。灰白質のタウ沈着に加え、皮質下白質にタウ陽性のthreads様構造とオリゴデンドロサイト内の嗜銀球様の封入体が観察された。PiDでは細胞体に加え皮質白質の軸索内のタウ沈着の可能性が考えられた。4)MSA13例において、活性型ミクログロアと錐体外路系と小脳出力系の組織障害との相関が高くGCIとの相関も認められた。活性型ミクログロアは神経路変性に関与している可能性が示唆された。5)MSA6例において、GCIに14-3-3とαsynucleinの共存が認められ、14-3-3の陽性率は40から90%の陽性率であった。14-3-3標識率と神経組織の障害スコアーの間には負の相関が認められた。14-3-3がαsynucleinの封入体内凝集に関与している可能性が示唆された。
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