研究概要 |
本研究ではNotchの細胞分化、増殖、形質転換におよぼす影響とシグナル伝達の分子機構について、ヒト上皮系細胞を用いて明らかにすることを目的とする。即ち、ヒト肺クララ細胞株HPL1にwild type notch,活性型notchを遺伝子導入し、遺伝子発現の有無と細胞分化、増殖、形質転換におよぼす影響を比較検討する。 (1)notch遺伝子構成発現系の作成と細胞増殖におよぼす影響について検討した。HPL1-A細胞にpcDNA3発現ベクターを用いてwild type notch1,活性型notch1遺伝子を導入し、構成発現系を樹立できた。10%FBS添加培養下での増殖能を検討した結果、wild type notch1導入株は活性型notch1導入株に比して、5倍増殖能が高く、notch1の活性化がHPL1-A細胞の増殖を抑制することを明らかにした。更に、活性化notch1の標的遺伝子であるHes-1の活性化をルシフェラーゼアッセイで検討した結果、活性型notch1導入株はwild type notch1導入株に比して、明らかなルシフェラーゼ活性の増強がみられた。 (2)notch遺伝子構成発現系におけるリガンドの影響について検討した。preB細胞株NALM-6にレトロウイルスベクター(PMX)を用いてnotchのリガンドの1つであるjagged1を遺伝子導入したjagged1発現系を作成し、wild type notch1導入HPL-A細胞とco-cultureした。その結果、リガンド結合によるnotchの活性化に伴い、HPL-A細胞の増殖が抑制された。この場合のnotch1の活性化をHes-1ルシフェラーゼアッセイを行い、リガンド刺激に反応するルシフェラーゼ活性の増強を確認した。今後、細胞分化および形質転換に関して検討する。
|