レトロウイルス誘発性疾患のモデルとしてマウスフレンド白血病ウイルス(FLV)の系を用いて遺伝子治療モデルを確立することを目的として実験を行った。導入遺伝子は野生マウスより見いだされた宿主遺伝子の一つでecotropicマウス白血病ウイルス(MuLV)に抵抗性を示すFv-4^r遺伝子である。前年度までに発現効率のよい遺伝子導入骨髄キメラマウスの作製、遺伝子導入マウスのウイルス抵抗性については報告した。今年度は導入遺伝子の作用機序を探る目的で実験を行い、以下の成果を得た。 1)遺伝子導入骨髄キメラマウスの血球系細胞へのウイルス結合性の検討: Fv-4^r遺伝子産物は細胞表面に存在するウイルスレセプターに結合することによって新たなウイルスの感染を阻害する可能性が考えられている。そこで、FLV-ENV-GFP(FLVのENV蛋白にGFPを結合させたもの)をvaculovirusの系を用いて作製し、様々な程度にFv-4^r遺伝子産物を発現した遺伝子導入マウスの細胞に結合させた。その結果、Fv-4^r遺伝子産物の発現量に逆相関する形でFLV-ENV-GFPの結合が認められ、レセプター干渉作用が起こっていることが実証された。 2)細胞外から結合したFv-4^r遺伝子産物とFLV-ENV-GFPとの干渉作用: Fv-4^r遺伝子産物を様々な濃度で結合させた血球細胞にFLV-ENV-GFPを結合させたところ、やはり同様にレセプターへの結合における競合が認められた。 さらに、遺伝子導入マウスにおける免疫系の作用とウイルス抵抗性について検討する予定である。
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