研究概要 |
本研究ではスカベンジャー受容体、特にmacrophage scavenger reptor Class A(MSR-A)とmacrophage receptor with collagenous structure(MARCO)の生体防御機能を検討した。 まず、LPS肺障害、及び肝障害におけるマクロファージとMSR-Aの役割を検討した。LPS吸入マウス肺には多数のマクロファージが滲出し、CD14やスカベンジャー受容体の発現が増強し、マクロファージはLPSとともにアポトーシスの処理に重要な役割を果たしていることを明らかにした(PatholInt49,983-992,1999)。また、LPSによって通常は発現しないMARCOの発現が肝や脾に誘導されることを見いだした(Arch Histol Cytol62:83-95,1999)。 次に、生菌に対するマクロファージとスカベンジャー受容体の役割を解析した。マクロファ-ジ除去マウスにリステリアを感染させると、菌はマクロファージに捕捉されないため肝細胞に感染してアポトーシスを誘導し、滲出性病変が拡大してマウスは死亡した(Pathol49,519-532,1999)。次にMSR-Aノックアウトマウスを用いてBCG感染実験を行った。ノックアウトマウスでは、1-2週後から肺病変が拡大し、高い死亡率を呈した。In vitroの検討ではノックアウトマウスマクロファージは菌の取り込みは少なく、MSR-AはBCGの受容体の一つと考えられた。一方、ノックアウトマウスマクロファージの殺菌能の低下も明らかになった。 以上の成果を踏まえ、次年度はスカベンジャー受容体を介するシグナルがどのように殺菌機構に関与するかを解明したい。われわれはBCG生菌にのみ発現する取り込み空胞の裏打ち蛋白(TACO)を見いだしており、スカベンジャー受容体を介する殺菌機構とTACOとの関わりについても検討する。
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