研究概要 |
アミロイドβ蛋白前駆体(APP)の細胞ドメインと結合する127KDa蛋白,即ちUV damaged-DNA binding protein(UV-DDB)の脳内分布を明らかにするために本年度は,特異抗体を用いて,非痴呆脳(対照例)2例,アルツハイマー型痴呆脳3例について連続切片を用いて,βアミロイド蛋白(βA),コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT),タウ,ユビキチンおよびUV-DDBの免疫組織学的染色を行った. 対照例は71才男性,大腸癌と胃癌の二重癌症例と44才男性,腎小細胞癌の症例.また,アルツハイマー病は85才男性,68才男性,84才男性である.共に前頭葉,大脳基底核,海馬のパラホルムアルデヒド固定,パラフィン切片を用いた. 各蛋白の発現については正常神経細胞,変性神経細胞,神経原線維変化,老人斑に注目して観察した. Chatの免疫染色性は基底核を除いて著しく低下,特にアルツハイマー病脳の海馬・前頭葉では陰性であった.これに対し,βAおよびユビキチン免疫染色はびまん型,典型的老人斑共にほぼ一致して陽性であり,とくにユビキチンはアルツハイマー病脳の変性神経細胞の領域でタウ陽性神経細胞および細胞突起にも陽性であり,プロテアソーム系の酵素活性の上昇が示唆された.UV-DDB免疫染色は正常対照脳では陰性であったが,アルツハイマー脳では,びまん型老人斑領域や前頭葉,神経原線維変化領域に近い海馬の変性神経細胞核には弱陽性を示した.従って,DNA損傷の際にAPサイトを認識して結合するUV-DDBが特定の変性神経細胞では修復に関与して発現している可能性が考えられた.
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