研究課題/領域番号 |
11670210
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
吉見 直己 岐阜大学, 医学部, 助教授 (30166996)
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研究分担者 |
山田 泰広 岐阜大学, 医学部, 助手 (70313872)
森 秀樹 岐阜大学, 医学部, 教授 (70021433)
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キーワード | 化学大腸発癌 / β-カテニン / 前癌病変 / ラット |
研究概要 |
昨年度に続き、今年度もアゾキシメタンで誘発した大腸発癌モデルの実験系において、大腸粘膜に生ずる変異陰窩巣(aberrant crypt foci;ACF)を指標とする5〜20週間の短期および中期実験を行い、従来型のACFを検出するとともに、昨年度に新規に検出したβカテニン遺伝子変異を有する病巣について詳細な検討を行った。すなわち、ラット大腸粘膜はホルマリン固定後、メチレンブルー染色し、ACF総形成数を測定するとともに、パラフイン包埋標本を作製した。特に昨年度と同様にACF部はマーキングして、粘膜に対して水平方向からの薄切標本作製(ヘマトキシリン・エオジン染色)を行うとともにβカテニンに対する免疫染色を行った。この水平方向の標本から見つけられた新規の病巣群に対し、細胞・形態学的異型度の検索を行った。 今回、βカテニンの免疫染色では今まで検討されていた通常タイプのACFではβカテニンの核や細胞質への蓄積を示す陽性ははっきりしないものの、新規に見つけられた組織学的な異形成を有する病巣では陽性を示しており、βカテニン遺伝子変異を反映するものと考えられた。加えて、形態学的な異型度として核の極性や重層化および腺構造を検討した結果、形態的異型度は週令とともにこの新規βカテニン蓄積巣は異型度を増加するのに対し、従来のACFに異型度の増加は見られなかった。 以上から、本研究で発見された新規のラット大腸粘膜異型病巣が、化学発癌における腫瘍性病変の芽であることが推定された。しかしながら、化学発癌剤の投与後、従来のACFが大腸粘膜全体で約100から200個見られるのに対し、この病巣は約半分程度でしか認められていないが、化学発癌剤での腫瘍の顕在化は通常1から2個であるため、今後、この病巣の顕在化に対する詳細な研究が必要である。
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