研究概要 |
糸球体腎炎の感受性遺伝子座にオステオポンチン(OPN)遺伝子多型を認めたので、遺伝子多型によるOPNの機能的差異と,それが如何に糸球体腎炎の発症に関与するかを明らかにすることを目的として解析し以下の成果を得た。 1)オステオポンチン(OPN)遺伝子型と糸球体腎炎発症のリンケージ解析 MRL/lprとC3H/lprの戻し交配系(N2)、兄妹交配系(F2)を作成し、糸球体腎炎の組織病理学的スコアとマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝子型のリンケージ解析を行い、F2マウスにおいてOPN遺伝子型と糸球体腎炎の発症・進展の間に有意な関連を認めた。そこでOPN遺伝子座を有する5番染色体のQTL解析の結果、OPN遺伝子座付近に糸球体腎炎の発症・進展との間にもっとも高い関連を見いだした。 2)他の責任候補遺伝子との関連とMRL/lprマウスの疾病の発症・進展・質的差異の解析 血管炎、関節炎、唾液腺炎の疾患感受性遺伝子座はいずれもOPN遺伝子座とは異なる位置にあった。糸球体腎炎の疾患感受性遺伝子座は他に第4番染色体に一カ所マップされた。 3)OPN遺伝子型と血清IgG3発現量の関連解析 上記マウスの糸球体腎炎の責任蛋白がIgG3であることを既に見いだしているので血清IgG3をELISAを用いて測定し、(MRL/1pr x C3H/1pr)F2マウスにおいてOPN遺伝子型の異なる群間で血清IgG3量に有意差を認めた。 4)OPNコンビナント蛋白のin vitroにおける機能解析 コムギ胚芽を用いた無細胞系蛋白合成システムによりMRL型、C3H型それぞれの合成多型蛋白を作成してマウス由来の脾細胞の培養系に加え、サイトカインおよびIgGの発現量を定量した。MRL型OPNは脾細胞にIgG3の産生を誘導するとともにマクロファージ活性化因子の産生を誘導し、その効果はC3H型に比べ有意に高かった。 これらより、OPNの構造遺伝子多型による機能の差異が、マクロファージ活性化、IgG3産生の経路を修飾することによりMRL/1prマウスにおける糸球体腎炎発症に関与していることが示唆された。
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