研究概要 |
平成11年度にGATA-1がシトクロムb558重鎖(CYBB)遺伝子転写開始点上流98塩基にあるGATA結合部位(-98GATA)を通して好酸球特異的にCYBB遺伝子発現を活性化する事を見出し報告したが、「好中球、単球、Bリンパ球ではCYBBが激減しているにもかかわらず好酸球では正常レベルにCYBBを発現し得る。」という本病態の特徴を説明するには至っていない。そこで好中球、単球、Bリンパ球でのCYBBmRNA激減の原因である本遺伝子転写開始点上流53塩基にあるPU.1結合部位(-53PU.1)の点変異によるCYBB発現障害を好酸球はこのGATA依存性機構により克服しえるか否かを解析した。まずCYBB遺伝子の発現が認められる好酸球性AML14.3D10細胞核中のGATA-1及びPU.1がそれぞれの結合部位に結合することを確認した。次に-98GATAおよび-53PU.1を含むCYBBプロモーター/レポータープラスミドを用いそれぞれの結合部位の機能解析を同細胞にて行った。その結果-98GATAおよび-53PU.1は共に機能しており、かつ独立して働いている事が示された。そこでGATA-1,PU.1共に発現していないCOS細胞を用いて異所性過剰発現法にて解析を行ったところ、それぞれ単独で各結合部位依存性に-105/+12CYBBプロモーターを強く活性化できる事が示された。これらの結果は、好酸球はPU.依存性およびGATA-1依存性の両方の機構を備え持つ事を示している。すなわちGATA-1を発現しておらずPU.1依存性の転写調節機構のみの好中球、単球、Bリンパ球では-53PU.1の遺伝子変異により危機的な障害を受けたが、両方の機構を備え持つ好酸球ではGATA-1依存性の機構によりこの遺伝子変異による障害を克服し得た結果上記病態が成立したと考えられる。
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