「好中球、単球、Bリンパ球ではシトクロムb558重鎖(CYBB)量が激減しほとんど活性酸素が産生できないのに対し好酸球のみは正常レベルの活性酸素産生に十分な量のCYBBを発現できる。」という本慢性肉芽腫症の病態を解明するため、好酸球性細胞でのみ働く正の調節部位の検索をした結果、転写開始点上流-98塩基のGATA結合部位(-98GATA)がそれに該当する事が示された。次に好酸球性細胞においてGATA-1とGATA-2が特異的に-98GATAに結合する事が示された。異所性発現法により両者は単独でしかも同様の親和性で結合する事、並びに単独では共に-98GATA依存性にCYBB転写を促進するが、両者共存下ではGATA-2はGATA-1の競合阻害因子としてその作用を阻害する事が示された。CYBB発現細胞のうち好酸球性細胞のみがGATA-1を発現している事から、本GATA機構は好酸球特異的であると言える。次に本症例におけるCYBBmRNA激減の原因である転写開始点上流53塩基にあるPU.1結合部位(-53PU.1)の点変異によるCYBB発現障害を好酸球性細胞がこのGATA機構により克服しえるか否かを検討した。好酸球性細胞核中のGATA-1及びPU.1が各結合部位に結合することを確認した後、-98GATAおよび-53PU.1の機能解析を行った結果、-98GATAおよび-53PU.1は好酸球性細胞にて独立して機能しうる事が示された。また異所性発現法によりGATA-1及びPU.1がそれぞれ単独で本プロモーターを活性化できる事も示された。これらの結果より、上記病態がPU.1機構とGATA-1機構の両方を持つ好酸球が、-53PU.1の変異により他のCYBB発現細胞が危機的な障害を受ける状況でもGATA-1機構により十分量のCYBB発現し得た結果であると考えられた。
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