急性炎症での細胞浸潤と血管透過の機構を知るために、ウサギのMCP-1(rrMCP-1)とGRO(rrGRO)の遺伝子組換体、特異抗体を作成し、免疫測定系を確立した。ウサギ関節炎モデルにて、MCP-1の産生動態、産生制御機構、単球浸潤における意義を検討した。MCP-1は炎症早期に滑膜細胞で産生され、TNFαとIL-1により制御されていた。抗MCP-1抗体の投与で単球浸潤は抑制されたが、好中球の浸潤、TNFα、IL-1β、IL-8の産生量に変化はなかった。更に、rrMCP-1の投与で単球浸潤を起こすことが出来たが、TNFα、IL-1β、IL-8は検出されず、軟骨破壊も認めなかった。これらの結果からMCP-1による単核球の浸潤は急性炎症の増幅系には働いていないと考えられる。更に、炎症初期に浸潤する好中球がMCP-1による単球の浸潤に重要であることが判明した。次にGROの関節炎で果たす役割を検討した。GROの産生は、2時間目に主なピークをもって主に滑膜細胞で産生されていた。このGROの産生はIL-1で制御され、TNFα、IL-8とは独立していた。このrrGROの関節内投与で、好中球浸潤を起こすことができ、IL-8と共に重要な好中球の遊走因子であること、浸潤した好中球がIL-1β、IL-8を産生することが明らかとなった。これらから、炎症初期に産生されるIL-1がGROの産生を誘導し、GROにより浸潤した好中球が更にIL-1とIL-8の産生を行うが、このIL-1産生はTNFαにより制御されていることが判明した。また、GROはTNFαの産生を誘導し、血管透過に関与していることが明らかになった。以前から炎症局所でのサイトカイン、特にTNFα、IL-1β、IL-8、IL-1Raの役割を解析してきているが、MCP-1、GROの検索結果を追加することにより、これらの機構の解明がより進んだ。
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