研究概要 |
本研究の目的は、肺神経内分泌細胞の細胞分化を調節しているbasic helix-loop-helix型の神経転写因子を明らかにするとともに、その転写因子の調節機構に関与している因子を明らかにすることである。 1)マウス肺の免疫組織化学的な検討より、肺神経内分泌細胞には、正の神経転写因子であるMash1が、一方、非肺神経内分泌細胞には負の神経転写因子であるHes1の発現が認められた。Northern blotting法により、胎仔期の肺についての発現を検討すると、Hes1は胚発生初期より発現が認められ、一方、Mash1は、肺神経内分泌細胞の発現に伴って、発現の亢進が認められた。 2)Mash1およびHes1遺伝子欠損マウスの肺の神経内分泌細胞の出現を見ると、Mash1遺伝子欠損マウスでは、神経内分泌細胞が見られず、一方、Hes1遺伝子欠損マウスでは、神経内分泌細胞が多数出現した。 3)神経転写因子の調節として、Notchシグナル系が知られているが、肺には、Notch1,2,3,4および、そのリガンドであるDelta-like1,Jagged1,Jagged2の発現が認められた。 以上より、肺の神経内分泌細胞の細胞分化には正の神経転写因子であるMash1が必須であり、一方負の神経転写因子であるHes1は、神経内分泌細胞の分化を抑制するとともに、非神経内分泌細胞の分化に関与していると考えられた。また、肺の細胞分化の決定には、Notchシグナルが関与していると考えられた。
|