研究概要 |
平成11年度は下記の5つの点について検討し以下の結果を得た。 1.ヒト腎細胞癌培養細胞株におけるMN/CA9遺伝子の発現:7種のヒト腎細胞培養細胞株(SKRC1,6,10,12,14,44,59)において、RT-PCR法を用いてRNAレベルでのMN/CA9遺伝子の発現の有無を調べ、5種の培養細胞株(SKRC-1,6,10,44,59)で発現を認めた。 2.ヒト腎細胞癌培養細胞株におけるMN/CA9遺伝子のメチル化状態:上記1のヒト腎細胞癌培養細胞株に対し、5'上流領域(-142bpから+92bpまで)の7部位のCpGのメチル化の有無について、Bisulphite genomic sequencing protocol法を用いて調べた。遺伝子発現の見られない2種の培養細胞株において7部位のCpGは完全にメチル化されていた。一方、遺伝子発現のみられる5種の培養細胞株全てに低メチル化が観察された。 3.ヒト腎細胞癌組織におけるMN抗原の発現:13例の腎細胞癌組織と3例の非癌部腎組織において、mAbG250抗体を用いた免疫染色を行い、MN抗原の発現の有無を調べた。10例の腎細胞癌においてMN抗原陽性であり、残り3例の腎細胞癌と3例の非癌部腎組織においてMN抗原陰性であった。 4.ヒト腎細胞癌組織におけるMN/CA9遺伝子のメチル化状態:上記3の組織サンプルに対し、上記2と同様の検討を行った。免疫染色上、MN抗原陽性腎細胞癌(10例)において高率(90%)に低メチル化が観察された。一方、MN抗原陰性腎細胞癌、非癌部腎組織において低メチル化は認められなかった。 5.メチル化阻害剤によるMN/CA9遺伝子発現誘導:MN/CA9遺伝子発現が認められず、5'上流領域(-142bpから+92bpまで)が完全にメチル化されている2種のヒト腎細胞癌培養細胞株(SKRC12,14)に対し、1.0μMの5-aza-2'-deoxycytidineを7日間投与した。MN/CA9遺伝子発現がRNAレベルで誘導され、5'上流領域の脱メチル化も観察された。
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