研究概要 |
非上皮系胃腫瘍の大部分を占めるとされるGastrointestinal stromal tumor(GIST)でc-kit遺伝子の変異の有無を調べてある22例(15例は胃原発、4例は小腸原発、3例は転移部)の腫瘍検体を用いて、染色体の21カ所の領域の41個のマイクロサテライトマーカーを用いて、これらの領域の遺伝子欠失(LOH)および遺伝子不安定性(MSI)を調べた。また、染色体22q領域に存在するNF2遺伝子の変異についてもPCR-SSCPを用いて調べた。GIST症例はFranquemont's criteriaに基づきhigh-risk groupとlow-risk groupに分けた。この結果、14q(9/19,47%),22q(17/1,77%)に高率にLOHが認められたが、high-risk groupとlow-risk groupでは有意差は認めなかった。これら以外の領域のLOHおよびMSIはhigh-risk groupに有意に(p<0.05)高頻度に認めた。NF2遺伝子の変異は22q-LOHのみられた2例に認められた。以上の結果はc-kit遺伝子の変異とは独立した事象であった。以上から、22q,14q領域のLOHはGISTに特異な現象であり、high-riskになるとそのほかの領域にもLOHが見られるようになり、また、MSIも関わってくると考えられる。また、染色体22q領域に存在するNF2遺伝子はGISTの一部で腫瘍発生の抑制因子である可能性が考えられる。
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