研究概要 |
1.Gastrointestinal stromal tumor (GIST)における染色体22q領域を含む遺伝子変化を調べた。22例のGISTを大きさや分裂像の頻度からlow-risk(9例)、high-risk(13例)に分け、それぞれ22qを含む21の染色体領域における40カ所のmicrosatellite領域に設定したprimerを用い、loss of heterozygosity (LOH)を調べた。1P領域で19例のInformative case中7例,37%,14q領域で9/19,47%,22q領域で17/22,77%にLOHを認めた。特に22q12領域において16/17と高頻度でLOHを認めたが、この領域はneurofibromatosisの原因遺伝子とされるNF2が位置する部位であった。この領域のLOHはlow-risk、high-riskとも有意差は認めなかった。また、22q領域でLOHを示した症例のうち2例(2/22)にNF2のmutationを認めた。この結果よりGISTにおいてNF2が腫瘍化に際し重要な役割を果たしていると考えられる。 2.2.胃癌手術検体80例を用いて、染色体22q13に位置するp300遺伝子の変化について検討した。15カ所のマイクロサテライト領域に対するプライマーを用いて、遺伝子欠失を検討した。分化型34例中21例、未分化型46例中30例に遺伝子欠失を認めたが、両者の頻度に有意な差は認められなかった。分化型において進行癌とリンパ節転移例に有意に多く認められた。以上から、P300遺伝子の変化は胃癌の分化型において密接に関係し、癌抑制遺伝子としての働きを示すものと考えられた。 以上の研究成果より、GISTはNF2遺伝子と胃癌はp300遺伝子と強い関連が示され、染色体22q領域の変化が胃腫瘍と密接に関連していることが明らかにされた。
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