研究概要 |
細胞関連型isoform VEGF189の発現は固形癌の増殖、遠隔転移、予後に密接に関連することが想定されている。本研究では細胞関連型VEGF189isoformの機能を細胞生物学的に証明しようとした。細胞関連型VEGF189の特定領域配列を標的にしたリボザイム(RNA酵素)を非小細胞肺癌株に導入し、VEGF189をin vivoで分解し、非小細胞肺癌株におけるVEGF189分子の機能を考察した。平成11年度にはVEGF189を特異的に分解するリボザイムの作成を中心として実験を進めた。細胞関連型のVEGF189に特異的に存在するExon6の塩基配列を標的としたハンマーヘッド型リボザイム(V189Rz)を作成した。人工的に作成したRNA基質を用い、このV189Rzの特異性・切断活性をin vitroで解析し、至適pH、温度、Mg濃度を確認することができた。平成12年度は前年度に成功したVEGF189を特異性に切断できるリボザイムをベクターpHβに組み込んだ。これをリポフェクションにより遺伝子導入したVEGF189発現の確認されているOZ-6肺癌株に導入した。RT-PCR・シークエンス解析でリボザイムの導入を確認し、同定されたリボザイム導入細胞株を用い、細胞生物学的解析を行なった。その結果リボザイムによるVEGF189の分解によって、非小細胞肺癌間質の血管新生が抑制され、肺癌の増殖がin vivoで抑制されることを明らかにした。これらの研究成果から細胞関連型VEGF189はより特異的に肺癌の間質血管新生、遠隔転移に関連することが証明された。研究成果は"Ribozyme approach to downregulate VEGF189 expression in non-small cell lung cancer(NSCLC)"として論文発表された(Eur.J.Cancer36:2390-2396,2000)。
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