(1)TGF-βによるc-myc発現抑制の機序 ヒトc-mycプロモーター内のTGF-β反応領域を同定した。この領域はE2F結合配列とマウスストロメライシン遺伝子上で発見されたTIE(TGF-βinhibitory element)が重なった配列をもち、TGF-βのシグナルによりSmadがこの配列に直接結合することが示された。 (2)扁平上皮癌細胞におけるc-myc発現調節異常の責任分子の同定 複数の癌細胞でTIE/E2Fを介するc-mycの発現抑制反応が消失していた。また、発現抑制反応が残存しているヒト角化細胞株HaCaTでTIE/E2Fに結合する蛋白複合体の一部が癌細胞では消失していることをDNAアフィニティ沈降法により見い出した。 (3)変異Smad3の導入による浸潤性増殖能獲得の機序 扁平上皮癌細胞株の浸潤能を検出する3次元培養法を確立し、このモデルを用いて優勢抑制活性を持つ変異SmadであるSmad3D407Eを安定導入したHaCaT細胞株が、変異Smad3の発現量に依存して浸潤性増殖能を獲得することを示した。また、この浸潤能を獲得した細胞で発現量が変化した遺伝子をDNAチップを用いて同定した。 (4)骨形成因子のシグナルとその標的 骨形成因子(BMP)で誘導されるマウスSmad6遺伝子の転写調節領域をクローニングし、BMP反応配列を同定した。この配列はショウジョウバエにおけるMadの反応エレメントに類似のGCに富む配列を持ち、BMPシグナル特異的なSmad1とSmad5の結合配列になっていた。さらに、異なるサブファミリーに属するBMP-2/4とBMP-6/7を同時に作用させると協調作用がみられる機序について解析し、それぞれの受容体であるALK-3/6とALK-2の間でも協調作用がみられたことから、骨形成因子の受容体であるALK-3/6とALK-2の間で、少なくとも部分的に異なったシグナル経路が活性化されていることを示した。
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