1.CD25^+T細胞の除去により誘導される抗腫瘍免疫の解析 正常マウス末梢CD4^+T細胞の約10%を占めるCD25^+T細胞群は他のT細胞に対して活性化・増殖抑制能をもち、自己免疫、腫瘍免疫の抑制に関わっている。実際、正常マウス脾細胞からCD25^+T細胞群を除去すると、in vivoで抗腫瘍免疫応答が自然誘導される。またCD25^+T細胞を除去した分画(CD25^-T細胞)をin vitroで培養すると、様々な腫瘍を障害するキラー細胞が誘導される。CD25^+T細胞除去により誘導されるキラー細胞は主にNK細胞群であり、その誘導時にはCD25^-CD4^+T細胞の存在及びCD25^-CD4^+T細胞より産生されるIL-2が必須であることを明らかにした。 2.CD25^+T細胞による腫瘍免疫抑制機構の解析 CD25^-T細胞は抗CD3抗体等のポリクローナルT細胞刺激に対して分裂増殖反応を示すが、一方、CD25^+T細胞は分裂増殖反応を全く示さない状態(anergy)にあること、更に両者を特定の比率以上で共培養した場合、CD25^+T細胞はCD25^-T細胞の活性化を抑制する。また抗CD3抗体刺激と共にインターロイキン-2(IL-2)を共存させると、CD25^+T細胞はアナージー状態が破れ分裂増殖反応を呈するようになり、同時にCD25^-T細胞に対しても抑制的に作用し得なくなるということ、またこの様に一旦活性化されたCD25^+T細胞を回収し、今度は抗原提示細胞(APC)存在下、抗CD3抗体のみで刺激すると、再びCD25^+T細胞はアナージー且つ免疫抑制能を呈することを明らかにした。この特性を利用し、CD25^+T細胞株の樹立を試みたところ、実際に免疫抑制能を維持した状態の細胞株を樹立することに成功した。更にこの細胞株からT細胞クローンを樹立し、現在クローンレベルでその免疫抑制機構の解析を行なっている。
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