研究概要 |
1.高転移性マウスLewis肺癌にβガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子を導入,これをマウスに移植して単一細胞レベルで識別可能な腹膜微小転移モデルを作成した.また緑色蛍光蛋白(GFP)遺伝子をマーカー遺伝子としてラット舌癌細胞に導入し,生体内で観察可能な腹膜微小転移モデルを作成した.これらを用いて腹膜転移の初期過程を解析したところ,いずれのモデルにおいても腹腔接種3-4日後に大網に一致して特異的な青色の染色像,あるいは緑色蛍光像が認められ大網が初期転移巣であることを明らかにした. 2.GFP遺伝子導入転移性細胞をマウス腸間膜静脈から静注し,肝転移の初期過程をビデオ撮影装置付きの蛍光顕微鏡を用いて生体内においてリアルタイムで観察記録できるシステム(intravital videomicroscopy)を確立した.本システムを用いて血行性転移の初期過程を解析したところ,大部分の細胞は接種後極めて短時間(数秒)のうちに類洞の門脈側近位部にRolling様の挙動を示すことなく塞栓を起こし,その後大部分は死滅するが一部の細胞は4日後から再び類洞内で増殖を開始することを明らかにした. 3.癌細胞と内皮細胞の相互作用をin vivoで明らかにするために内皮細胞を可視化できるトランスジェニックマウスの作出に関する予備的検討として,内皮細胞において特異的に発現しているTIE2遺伝子等をプロモーターとし、GFPをリポーターとする発現ベクターを作成中である. 4.胃癌の腹膜微小転移に対するRT-PCR法を用いた遺伝子診断法を実用化するための試みとして,リアルタイムPCR法(Light Cycler)を用いた迅速定量法を確立した.カットオフ値を設定することにより従来のRT-PCR法に比べてより特異性の高い再発に対するリスク評価が手術時間内に可能となった.
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