研究概要 |
本研究ではマーカー遺伝子導入により血行性転移および腹膜転移の微小転移モデルを作成し,微小転移のin vivoにおける実態とそのダイナミズムをリアルタイムに解析した。血行性転移に関しては平成11年度にGFP遺伝子導入ラット舌癌転移モデルを作成し,Intravital videomicroscopy (IVVM)法と組み合わせてin vivoにおけるリアルタイム解析法を確立、肝転移初期過程を解析した。その結果、高・低転移性細胞の転移能の違いは類洞内皮への初期定着ではなく、主としてインテグリンα5を介した内皮下基底膜への安定した接着の違いに起因することを明らかにした。また平成12年度、13年度には各々ヒト胃癌細胞株(GCIY、MKN28)および大腸癌細胞株(COLM-5)へのGFP遺伝子導入による腹膜微小転移モデルを作成し、腹膜転移の初期過程のin vivo解析を行った。その結果、腹膜転移には大網に限局して初期転移巣を形成する型と大網と壁側腹膜の両方に初期から転移する型の2種類が存在することを明らかにした。単層中皮細胞培養系を用いたin vitroの実験から両者の違いは中皮細胞への接着性ではなく、中皮細胞下のフィブロネクチンを主成分とするマトリックスへの接着性の違いに起因する可能性を示した。内皮細胞を可視化できるトランスジェニックマウスの作出に関する予備的検討として計画した内皮細胞特異的遺伝子をプロモーターとし、GFPをリポーターとする発現ベクターの構築に関しては現在継続して行っている. また微小転移研究の臨床応用として胃癌患者の腹膜微小転移を高感度に検出できる定量的リアルタイムRT-PCR法を平成11-12年度にかけて確立した.平成13年度には胃癌腹膜再発のリスク評価に対する本法の意義を確認するためProspective study(厚生労働省から認定を受けた高度先進医療として)を行い、約50症例の収集を行い、細胞診に比べ感度が高く腹膜再発のハイリスク症例の選別に有用であることを示す結果を得た。
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