研究概要 |
赤内型感染マラリア原虫の感染防御に対するNO・の役割を解明する目的で、前年度はInterferon-γReceptorノックアウトマウス(IFN-γR-/-)にネズミマラリア原虫Plasmodium chabaudi chabaudi AS(Pcc)を腹腔内投与し、ネズミの生存率、赤血球数、parasitemiaをwild typeマウス(IFN-γR+/+)と比較したが、明瞭な差を認めることが出来なかった。今年度はinducible Nitric Oxide Synthaseノックアウトマウス(iNOS-/-)を用いて同様な感染実験を行った。iNOS-/-とwild type(iNOS+/+)にはマラリア原虫寄生赤血球数10^5,5X10^5および10^6個のそれぞれ3投与群で比較した。parasitemiaは両者に有意の差はないものの、平均値ではiNOS-/-が一般に高率な傾向を示した。その推移は投与後3-4日から出現し、8-10日にピークとなり、その後も生存したマウスは16-18日に二つ目のピークを形成した後、マラリア原虫は暫時赤血球から排除された。生存率では雌は5X10^5、雄は1X10^5の感染実験系でiNOS-/-とiNOS+/+との間に最も大きな差が見られた。赤血球数は処置前からiNOS-/-(800-1200万個)がiNOS+/+(1100-1500万個)より少なく、観察期間中その傾向が見られ、100万個以下になったマウスは殆ど死亡した。以上の結果、マウスの生存率の差は造血能力やマラリア原虫により誘導される各種サイトカイン、O_2などの免疫反応に関与する可溶性物質にもよると推察された。またNO・は赤内型の原虫を顕著に防御しないが、その可能性は必ずしも否定できないと考えられた。。なおiNOS-/-の実験系では差を認めなかったが、IFN-γR実験系では抗好中球モノクローナル抗体で好中球を枯渇させたマウスに生存日数が延長する傾向が見られた。この結果は好中球がマラリア感染マウスに何らかの障害を与えていると考えられた。
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