研究概要 |
補助金を交付された2年目の平成12年度は,前年度において確立された眼トキソカラ症の動物モデル(スナネズミMeriones ungiculatus)を用いて,ネコ回虫によっても眼病変が惹起できることを明らかにすることができた。しかしその病変の程度はイヌ回虫と較べ弱く,かつ頻度も低かった。またイヌ回虫で見られたような再燃は認められなかった。 イヌ回虫感染スナネズミの網膜病変をさらに詳しく病理組織学的に観察したところ,リンパ球の浸潤を伴ったぶどう膜炎が感染後期のスナネズミで認められた。また,イヌ回虫を感染させたスナネズミの約半数で神経症状が見られることを確認し,その脳病変を組織学的に追究したところ,小脳の神経線維の脱落,グリア細胞の消失など,不可逆的な小脳変性がその病態発現に関与していることを明らかにした。 これまで80匹余りのスナネズミに経口感染を行いその眼底を観察してきたが,ヒトで見られるような肉芽腫形成にまで至るスナネズミはl例もなかった。そのため,幼虫排泄物抗原をあらかじめ眼内に直接投与した後に経口感染する実験をおこない,既感作眼の網膜病変の程度を非感作眼と比較した。その結果,既感作眼,非感作眼の病変に差は認められなかった。また幼虫の眼内への移行経路を追究するために,幼虫を脳内に直接接種したところ,1週目に幼虫が眼内に出現し,大脳内に移行した幼虫が直接眼内に移行することが初めて証明された。
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