研究概要 |
我々は、マンソン裂頭条虫擬充尾虫の培養上清(ES)中にICRマウスおよびC57BI/6マウスの腹腔マクロファージの一酸化窒素合成酵素、ケモカインおよびTNF-αの遺伝子発現を抑制する因子が存在することを報告してきた。最近マウスのLPSのレセプターはToll like receptor 4(TLR4)であることが見いだされ、LPS低応答性のC3H/HeJはTLR4の細胞質内ドメインの1アミノ酸の変異によることが明らかになった。そこで、C3H/HeNおよびC3H/HeJの腹腔マクロファージを回収し、擬充尾虫のESを前添加し20時間培養後、LPSで刺激すると、C3H/HeN マウスではNorthern BlotによってTNF-α,chemokine(KC,JE)の遺伝子発現が抑制されたが、IL-1とIP-10については全く抑制が認められなかった。一方、C3H/HeJマウスではC3H/HeNマウスに比べてLPSによるTNF-α,KC,JEの遺伝子発現は低かったが、ESの前添加によってこれらの遺伝子発現はさらに抑制した。しかし、IL-1とIP-10の遺伝子発現は認められなかった。TLR4からのシグナル伝達では、NF-kBの活性化による遺伝子発現が最も考えられているが、IL-1はその遺伝子発現にNF-IL6を必要とすると報告されており、またIP-10はLPSで誘導されるIFN-βによって発現するとの報告があり、ESによる遺伝子発現の抑制はNF-kBの抑制であることが示唆された。 今回、さらにマクロファージ細胞株J774.1のNO産生への影響について検討した。J774.1は、腹腔マクロファージと異なり、LPS単独添加でnitriteを産生する。ESを5μg/ml加えて20時間培養した後に、培養液を交換しLPS10ng/mlで刺激した場合には、nitrite産生は約90%抑制され、ES中の抑制因子精製のassay系として有用であると考えられた。
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