研究概要 |
マンソン裂頭条虫擬充尾虫の分泌・排泄物質(ES物質)がマウスのマクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)、TNF-αやケモカインの遺伝子発現を抑制する機序について検討した。 1.C3H/HeJとC3H/HeNマウスのTNF-αおよびIL-1の遺伝子発現に対するESの抑制効果の比較から、ESによるTNF-αの抑制は、TLR4より下流で作用していると推察された。 2.この抑制に、マクロファージが産生する抑制因子であるprostaglandin E2,IL-10,SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の関与は認められなかった。 3.ESの前処置によって、TNF-αmRNAのstabilityの低下は認められなかった。 4.ESによってNF-κBの核への移行やκB elementへの結合低下が認められないかgel shift assayを用いて検討したが、抑制は認められず、ESによるTNF-αの発現抑制の機序にNF-κBは関与していないことが示唆された。 5.マクロファージの細胞株J774.1とRAW264.7においても、ESの前添加によってNOの産生が抑制され、TNF-α、IP-10の遺伝子発現も抑制された。そして、これらの細胞株が、遺伝子発現抑制の機序の解明に有用であることが明らかになった。 6.RAW264.7 cellにMAPK阻害剤であるPD98059やSB203580を添加するとTNF-αの遺伝子発現が抑制されるが、ESを前添加した群ではさらに顕著に抑制した。このことから、ESによるTNF-αの遺伝子発現の抑制にMAPKが関与している可能性が示唆された。 7.ESをtypsin 15μg/mlまたはprotease K0.1U/mlで処理することによって抑制活性はほとんど消失し、抑制因子は蛋白性因子であると推察された。
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