研究概要 |
腸管寄生線虫感染におけるCD8^+T細胞の役割を調べるために,ラットにNippostrongylus brasiliensisを感染させる系を用いて,CD8^+およびCD4^+T細胞を分離し,各種サイトカインmRNAの変化をRT-PCRにより調べ,その結果をまとめ報告した.それによれば,感染前と感染2週後とでは,どちらのサブセットでもIL-3と多くのTh2系のサイトカインmRNAの発現が大きく誘導されたが,最も大きな相違はCD4^+ではIL-4mRNAが著明に発現上昇したのに対して,CD8^+ではまったく発現してこなかったことであった.次に抗CD8抗体投与実験やCD8ノックアウト動物の使用を計画したので,N.brasiliensis感染系をマウスに移行するために,マウスに適応したN.brasiliensis株の作成・継代維持をおこない,これを用いてC57BL/6にN.brasiliensisを感染させたときの小腸の病理学的変化を感染後経時的に調べると,感染1〜2週後あたりに炎症細胞の浸潤や微絨毛・陰窩等の変化が観察された.さらにマウスでの各種サイトカインmRNAの発現を調べるために,あらたにRT-PCR用のプライマーを設計し,マウス腸間膜リンパ節とパイエル板を材料としてRT-PCRの条件を決定した.ついで,ラットのハイブリドーマによる抗マウスCD8抗体を得,C57BL/6では週1回1mgの腹腔投与でもCD8^+T細胞を効果的に排除することをFACS解析で確かめ,これをもとにN.brasiliensis感染前に1回と感染後5日ごとに抗CD8抗体の投与を続けながら,同様に空腸組織の病理学的変化を経時的に調べ,同時に腸間膜リンパ節とパイエル板を採取しRNAを調製して,先に条件を決定したRT-PCRによりサイトカインのmRNA発現の変化を追跡しているところである.また,抗体をつけたマグネティック・ビーズにより,マウスの腸間膜リンパ節細胞からCD4^+,CD8^+T細胞を分離することもほほ可能となり,それぞれのサブセットを抗原刺激することによるサイトカイン・タンパクの定量をELISA法で行う準備を進めている.
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