研究概要 |
C57BL/6マウスにNippostrongylus brasiliensis(Nb)を感染させ,10日後に腸間膜リンパ節(MLN)を取り出して,CD4^+とCD8^+T細胞とを分離した.各々の細胞をConA刺激下で6時間培養した後ELISPOTを実施し,各々のサブセットでのIL-4産生細胞の割合を比較した.また分離直後のサブセット細胞群からRNAを抽出し,RT-PCRでIL-4mRNAの量を比較した.CD4^+ではIL-4産生細胞が相当数検出されIL-4mRNAも強く発現されていたのに対して,CD8^+でのIL-4産生細胞はごくわずかでIL-4mRNAは検出されてこなかった.Nb感染ではラットでもマウスでも同様に,MLNにIL-4の発現のみられないCD8^+T細胞が著増してくることがわかった.次いでNbの分泌排泄抗原(ES)をConA刺激下にin vitroで添加してみると,ラットMLNから分離したCD4^+,CD8^+のいずれに対してもそれらのIFN-γ産生能を転写活性以降の段階で濃度依存的に,かつ他のサイトカインを介さず直接に作用して抑制するが,CD4^+からのIL-4(CD8^+からはIL-4は検出されなかった)およびCD4^+,CD8^+両者からのIL-10の産生能には何ら影響を与えなかった.IFN-γ産生の抑制があるにも関わらずCD8^+では,type2サイトカインの中でもIL-4の発現増強のみがみられなかったので,CD8^+ではIL-4の発現を特異的に抑制する何らかの機構が働いているのかもしれない.こうした特徴を持つCD8^+T細胞の役割を調べるために,抗CD8抗体をマウスの腹腔に投与した後にNbを感染させ,経時的に空腸の一定部分およびMLNを取り出して,各々病理組織学的変化とサイトカイン遺伝子発現の変化を抗体非投与マウス群のそれと比較した.感染後7日をピークに粘膜固有層と粘膜下層に中等度の細胞浸潤をともなう炎症がみられ,MLNではtype2サイトカインの発現増強がみられたが,組織学的変化の経過や程度,治癒過程,およびMLNでのサイトカイン発現の変化に両者の間であまり大きな差異は認められなかった.これらはCD8欠損マウスにNbを感染させて正常マウスと比較した場合もほぼ同様であった.以上からCD8^+T細胞は線虫感染による組織学的変化やサイトカイン環境の誘導には大きな関わりはないものと推測された.
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