消化管寄生虫に対する粘膜応答を制御する細胞表面分子としてCD80、CD86、CD4、FcεRに注目して実験が行われた。CD80とCD86については従来マウスを用いて検討されてきたが、今回ラットのこれらの分子に対するモノクローナル抗体が開発され実験が可能となった。Nippostrongylus brasiliensisおよびStrongyloides venezuelensis感染ラットは強いTh2応答をみる。これらの感染でIgE産生と好酸球増多はCD80かCD86のいずれかがあれば誘導され、両分子を同時に阻害すると抑制がみられた。一方排出虫卵数でみた防御反応については、Nippostrongylusに対してはCD86の関与がみられたがCD80は関与せず、Strongyloidesに対してはCD80とCD86の両者が阻害された場合のみ抑制された。防御におけるこの違いは各寄生虫で防御発現機構が異なることによると考えられる。CD4分子についてはT細胞上のCD4発現を欠くマウスを用いて検討した。CD4発現欠損マウスではIgE産生が完全に抑制されたが好酸球増多は正常に発現した。この結果からCD4分子がIgE産生の過程で細胞表面分子として機能的に関与しているが、好酸球増多の過程には関与していないことが示唆された。マスト細胞上のFcεRを介する好酸球増多の発現機構をNippostrongylus感染マウスを用いて解析した。マスト細胞をFcεRの架橋によって活性化すると特異酵素であるキマーゼが分泌される。このキマーゼ活性を新たに開発された化合物で阻害すると好酸球増多が抑制された。このことからキマーゼによる好酸球増多機構の存在が示唆された。
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