消化管寄生蠕虫に対する粘膜免疫応答で共通で特徴的なのはJgE産生と好酸球増多で、Th2細胞の活性化を介して発現する。もう1つの粘膜免疫である防御反応もT細胞依存性の反応であるが、その発現機序は各寄生虫で異なっている。本研究はこれらの各反応を担う細胞間認識分子を同定することを目的とした。抗原提示細胞上のcostimulatory分子であるCD80とCD86は、T細胞上のCD28およびCTLA4と結合可能な分子でT細胞活性化による機能分化との関係が注目されている。Nippostrogylusの1次感染後のlgE産生と好酸球増多はCD80またはCD86からの刺激があれば誘導されることが示され、これはマウスとラットで同様の結果で普遍的現象と考えられる。Th2細胞誘導に重要と考えられたNKT細胞の関与をT細胞受容体Va14を欠くことでNKT細胞欠損となったマウスを用いて検討した。Nippostrongylus感染後のlgE産生と好酸球の増多は、このNKT細胞がないマウスでも正常マウスと同等に発現することが示され、NKT細胞の関与なしにTh2細胞への分化が起ることが判明した。防御についてNippostrongylusと糞線虫では防御機構が異なることが知られているが、CD80とCD86の関与からも両寄生虫間に違いがみられた。小形条虫の虫卵に対する再感染防御では1隻の虫体の寄生をも許さない強い防御がみられる。この防御の誘導にはCD80、CD86、CD40、等の細胞間認識分子、およびVa14NKT細胞、NK細胞CD8T細胞の関与が否定され、CD4T細胞が主導的役割を果たすことが明かとなった。
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