寄生虫症の免疫学的診断法は、免疫学的手法と寄生虫抗原のさまざまな組合せで目的に適った最適な方法が検討されている。吸虫症では、虫体システインプロテア-ゼ(CP)に対する抗体を検出する方法が極めて特異性の高い免疫診断法として実施されている。また、寄生蠕虫の感染では特異IgE抗体の産生が高いとされている。本研究では、吸虫CPを精製することなく、吸虫CP特異抗体を検出するため、ELISAプレートを使ったcapture法3種を検討した。タンパク質のCP阻害剤である卵白シスタチン、IgGのFc部分と結合するProteinA、抗ヒトIgEモノクローナル抗体をcapture剤として利用した。シスタチンを固相化したELISAプレートには、虫体CPを含む粗抗原を添加後に通常のELISAの手順を行ない、ProteinAあるいは抗ヒトIgE抗体を固相化したプレートには、希釈被検血清、虫体粗抗原、CP酵素基質と順次添加し、CP活性を測定する。このようなcapture法3種で患者血清中の吸虫CP特異的IgGあるいはIgE抗体を検出、測定する。 上記の方法によりウェステルマン肺吸虫症の患者血清、肝蛭症の患者血清ともそれぞれ吸虫CP特異的IgG、IgE抗体が検出でき、しかも肺吸虫、肝蛭、肝吸虫、住血吸虫などの吸虫間で交差反応は認められず極めて特異性の高い免疫診断法であった。IgE抗体は血中半減期がIgG抗体に比べ極端に短かいことから、虫体CP特異的IgE抗体の変動の追跡は特異IgG抗体より治癒判定に有効であった。3種のcapture法は、吸虫症の他に線虫症、条虫症あるいは原虫症においても、何らかの虫体酵素が抗原となっている場合に広く応用可能であろう。
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