1.腸球菌より分離されその接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている薬剤耐性プラスミドpMG1を用い、接合伝達時に発現が誘導される遺伝子を、クローン化したpMG1断片をプローブとしてノーザンハイブリダイゼーションを行うことにより探したところ1つの遺伝子の転写量が接合伝達時に増加することを見いだした。これにより接合伝達信号を検索するための手がかりができた。 2.その遺伝子内部の断片をPCRにより増幅し腸球菌に対するスーサイドベクターにクローン化しエレクトロポレーションにより導入することによってその遺伝子が破壊された株を構築した。そして接合伝達に関する表現形を調べたところ固形培地上では親株同様の伝達頻度を示したが液体培地中では1万倍近い伝達頻度の低下が見られた。このことはこの遺伝子が接合凝集塊の安定化に働いているということを示している。 3.Tn917によりpMG1のtra突然変異体を分離しpMG1上の挿入部位を決定した。その結果tra遺伝子はプラスミド全体の約半分を占める領域に散在していることがわかった。そのうちとりあえず12株についていろいろな表現形について調べた。その結果7株について前述の遺伝子の転写量が構成的になっていた。このことはこの接合凝集塊の安定化を行っている遺伝子が通常負の調節を受けていることを示唆するものである。
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