(昨年度の研究成果)腸球菌から分離されその接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている薬剤耐性プラスミドpMG1を用い、接合伝達時に転写量が増加するプラスミド遺伝子(71ORF2遺伝子)を見いだした。この遺伝子は接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与していることが遺伝子破壊実験から明らかになった。また、Tn917により得られたtra変異株におけるこの遺伝子の発現を調べたところ、接合伝達に関わらず常に高いレベルで発現しており71ORF2遺伝子が負の制御を受けていることがわかった。 この結果を受けて平成12年度は(1)71ORF2遺伝子が構成的に発現しているtra変異株について相補性試験やDNA塩基配列の決定を行ったところ新たな遺伝子(75ORF4遺伝子)が71ORF2遺伝子の調節に関与していることがわかった。また75ORF4遺伝子は接合伝達時に71ORF2遺伝子とは逆に転写が低下する事がわかった。これは75ORF4遺伝子が71ORF2遺伝子と同様に接合伝達時に発現調節を受ける遺伝子であり、71ORF2遺伝子を負に制御する因子であることを裏付けている。(2)この結果から71ORF2遺伝子を制御する遺伝子の存在が示唆されたためtra変異株における75ORF4遺伝子の発現を調べたところ、発現しなくなったり、発現が構成的になったりと必ずしも一定ではなく、71ORF2遺伝子の場合とは異なり75ORF4遺伝子は複雑な制御を受けていることが示唆された。
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