1.薬剤耐性プラスミドpMG1は腸球菌から分離され、その接合伝達系が今まで知られているものと異なる可能性が示唆されている。そこで、研究が進んでいるグラム陰性菌のプラスミドでも良く明らかになっていない接合伝達時のtra遺伝子の発現調節機構を明らかにするためにこのプラスミドを用いることにした。接合伝達時の調節機構の存在を明らかにするために接合伝達時に転写量が増加するプラスミド遺伝子をノーザンハイブリダイゼーションで探したところ1つの遺伝子(71ORF2遺伝子)を見いだした。 2.遺伝子破壊実験から71ORF2遺伝子は接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与していることが明らかになった。 3.Tn917によりtra変異株を作製し、その変異体における71ORF2遺伝子の発現を調べたところ、接合伝達に関わらず常に高いレベルで発現しており71ORF2遺伝子が負の制御を受けていることがわかった。 4.71ORF2遺伝子が構成的に発現しているtra変異株の1つについて相補性試験やDNA塩基配列の決定を行ったところ新たな遺伝子(75ORF4遺伝子)が71ORF2遺伝子の調節に関与していることがわかった。 5.75ORF4遺伝子は71ORF2遺伝子とは逆に接合伝達時に転写が低下する事がわかった。これは75ORF4遺伝子が71ORF2遺伝子と同様に接合伝達時に発現調節を受ける遺伝子であり、71ORF2遺伝子を負に制御する因子であることを裏付けている。 6.tra変異株における75ORF4遺伝子の発現を調べたところ、発現しなくなったり、発現が構成的になったりと必ずしも一定ではなく、71ORF2遺伝子の場合とは異なり75ORF4遺伝子は複雑な制御を受けていることが示唆された。
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