研究概要 |
輸入真菌の中で本邦で患者が発生して問題となっている感染菌としては、東南アジアで問題となっているP.marneffeiがある。米国とは別に東南アジアでのH.capsulatum、またブラジルを中心に南米地域で流行しているパラコクシジオイデス症の原因菌であるP.brasiliensis等がある。 本研究の目的は、これらの輸入真菌症の原因真菌について、遺伝子解析を進め、原因菌に特異的な同定用のPCRプライマーを作製することにある。またそれらの情報をもとに簡便な同定システムを開発することも目的とする。さらに感染菌の生息場所等の分子疫学的な検討を行う。 本研究での研究成果では以下の結果が得られた。 i).P.brasiliensisについて、リボゾームのITS領域である18S-5.8S-28SrRNAの遺伝子を解析して、本菌株に特異的なPCRによる同定用プライマーを作製した。本PCRプライマーは、P.brasiliensisのITS領域の418塩基を増幅するように設計されたもので、試験した29の菌株を全て同定することができた。また、nested PCRによりP.brasiliensisの真菌要素を組織から見出す研究を進めている。さらに、本PCR系を用いることによって、土壌等から本菌検出が可能であることが確認された。 ii).病原真菌C.neoformans(Serotype B)が、ITS領域の遺伝子配列から、4つのグループに別れることを見い出した。それぞれのグループは地域に特異的であることから、遺伝子を解析することにより、感染地域が推定できることが明らかになった。 iii).世界の各地から分離した約50株のH.capsulatumについて、ITS1領域の配列を決定した結果、H.capsulatumはAsia type,North America type A, B, South America type 1,2およびH.duboisii typeの6つの遺伝子型に分けることができた。新たに本邦で分離したH.capsulatum株について、新しい遺伝子タイプ(East Asia type)を提案した。これらの結果から、H.capsulatumによる感染地域の推定が可能となった。 iv).P.marneffeiについても、我々が作成したPCRプライマーの有用性を多くの株で確認した。
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