研究概要 |
劇症型A群レンサ球菌感染症(TSLS)は死亡率約40%でしかも慢性腎不全などの後遺症を残す。日本で毎年50例程度発症しているが病原因子が不明であるために予防や治療を十分に行うことができない。我々は動物肺モデルを用いてTSLS患者由来株の培養上清からARDSを引き起こす蛋白を見いだし精製した。N末端アミノ酸解析によってこの蛋白はDnase活性ならびにスーパー抗原活性を有するSpeFであることが明らかとなった。TSLS発症株はすべてこの蛋白を産生しているが、咽頭分離株では産生しない株も見られた。さらに、他の病原因子産生の状況を明らかにするために、TSLS由来株について全菌体外分泌蛋白を抽出し2次元電気泳動によって詳細に解析した。それぞれのM型に属する菌株は似た2次元パターンを示し、M型の異なる菌は互いに異なるパターンを示した。2次元電気泳動で分離した主要な各スポットのN末端アミノ酸配列を決定し、SpeB,SpeFなど多くの蛋白を同定した。また多くの未発表の病原性と関連すると考えられる分泌蛋白を同定した。現在そのなかの4種の蛋白について遺伝子クローニング、蛋白の発現系を確立した。その結果これらは未報告のDnaseであることが明らかとなった。SpeFはM1,M3のTSLS株において比較的強いスポットを示し、しかも等電点の異なる複数のスポットとして検出された。この複数スポットについて現在解析中である。
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